小説

吉原裏同心(五) 初花/佐伯泰英

…読み終えて時間がたってしまって。ええと今回はあれだ、豊後国岡藩で幼なじみの甚吉が、リストラされて困っているのを、長屋を見つけて世話してあげるくだりが随所にはさまりつつ。文使いの正五郎が事件に巻き込まれて殺されて、その隠されていた娘との事件…

吉原裏同心(四) 清掻/佐伯泰英

清掻(すががき)とは、ここでは吉原で奏でられる三味線のしらべ。広辞苑にも載っていました。「江戸吉原で遊女が張見世に出る時、その合図に弾いた曲」。その清掻きの名手、おまんが吉原から身請けされることになり…というものがたりに、吉原の事実上の乗っ…

一瞬の風になれ/佐藤多佳子

とても面白かった。 感想追記:7/6 読み終えてだいぶたってしまった。でも爽やかな読後感はまだ残っているよ。三冊かけて、主人公神谷新二の、中3から高3までを追う。綴る。才能豊かな兄の影で続けていたサッカーを辞めての、陸上への転向。かっこよくて、…

吉原裏同心(三) 見番/佐伯泰英

吉原裏同心シリーズ、三冊目。佐伯泰英という作家は、スペインを舞台にした小説で名が売れた人だそうですね。少々停滞期に、これからまた売れるには、時代ものか官能ものしかない、と云われて時代小説に手を染めた(と云うのか?)そうですが、小気味よい語…

アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎

うーん。ホントにこれ本屋大賞受賞作なの?というのが読み終えた最初の感想。本屋大賞受賞!の帯に騙されました。違いました。ごめんなさい伊坂さん←?。教えてくれたひでっちさん、ありがとう。 帯には「四散した断片が描き出す物語の全体像とは?」「気鋭…

幸田文 (ちくま日本文学005)

去年の暮れくらいから出ている、筑摩の文庫版文学全集の、幸田文。ちょうど第一期5冊が同時に出たときに本屋で平積みになっていたので、この幸田文と内田百けんを買ってたのでした。積まれてましたが…。 前半に短編を幾つかと、後半は随筆中心の盛りだくさ…

猫とともに去りぬ/ロダーリ 訳:関口英子

随分前に、おすすめされて購入していたものの、すっかり積まれたままになっていた1冊。 ロダーリ、って知りませんでしたが、国際アンデルセン大賞を受賞したこともあるイタリアの児童文学(だけでないみたいですが)作家だそうです。風刺の効いた、にやりと…

猫町/萩原朔太郎 山口マオ

山口マオ氏の私家版のため、amazonはありません。倉敷の蟲文庫http://homepage3.nifty.com/mushi-b/で購入したB5サイズ40ページくらいの本。絵本…ではないかな。萩原朔太郎の、短い短い小説、いや随筆、に、山口マオさんの版画が添えられている。小説か随筆…

吉原裏同心(二) 足抜/佐伯泰英

シリーズ二冊目。ここからはじっくり舞台は吉原。足抜というのは、吉原の女郎が、年季を残して逃げ出すこと。脱獄…に近い雰囲気。相次ぐ雲隠れのような足抜の、謎解きと問題解決のために幹次郎と汀女が活躍ということで、「吉原裏同心」らしい働きぶりです。…

ドミノ/恩田陸

登場人物総勢27人、それぞれにきちんと性格設定されており、名前もあり。はじめのうちは会社の風景であったり、ミュージカルのオーディション場面であったり、駅の待ち合わせだったり、の同時並行で描かれる幾つかの物語について行くのがやっと。名前もすぐ…

吉原裏同心(一) 流離/佐伯泰英

ただいま実家の両親がはまっている佐伯泰英。ずらりと並ぶ本棚から(気に入るとひたすら買う&読むのは親譲り)吉原裏同心シリーズというの、2冊借りてきました。両親絶賛のテンポの良さ、キレの良さはなるほどという感じ。引き込まれます。 先日鎌倉まで往…

きみのためのバラ/池澤夏樹

昨年春に出た短編集。文庫化待つつもりだったのに、つい手にとってしまいました。するする読めてしまい、なんだか勿体なくなって途中何度か休憩しながら読了。舞台は順に東京、バリ、沖縄、ブラジル、ヘルシンキ、パリ、カナダ、メキシコ。主人公の性別も年…

エレンディラ/G.ガルシア・マルケス  訳 鼓直・木村榮一

「百年の孤独」をamazonで探していて、その過程で何冊かガルシア・マルケスを買ってしまいました。これはちくま文庫の短編集。幻想と現実の空気の層が幾重にも重なり合って不思議な像を見せてくれてるような。淡々と無茶苦茶な。そんな短編たち。1つめの「…

文豪怪談傑作選 川端康成集/川端康成 、東雅夫 編

通勤時間が短くなりすぎて、読書はなかなか進まなくなりました。家では仕事関係の本を読むようにしているので、つん読小説が増えている。これは図書館から借りたものの読み終わらず、一度返して延長してきました。 川端康成は新潮文庫で出ているのはほぼ持っ…

チグリスとユーフラテス/新井素子

これも図書館本。いやー。新井素子、何年ぶりだろう。20…はいかないか、中3のとき(1990年頃)は読んでたものな。でも20に近い10数年ぶりだな。単行本での出版は'99年というからこれも既に9年前かあ。そうかー。いやでも、なんというか。あの、文体というか…

犯人に告ぐ/雫井脩介

警察小説。引き込まれたのだけど、ちょっとしんどかった。主人公・巻島が、追いつめられたり誤解されたりするような描写が多くて…、こういうの、勝手に胃が痛くなってしまうのだよな。通勤電車で読み始めたものの、朝からしんどくなるのがイヤで手が止まって…

地図にない町/フィリップ・K.ディック 編・訳 仁賀克雄

これはディック幻想短編集と銘打たれております。確かにSFというより、一種ファンタジーぽいのも多い短編集でございました。ラビリンス博士による「名曲永久保存法」(裏の森は大騒ぎだ)、「万物賦活法」(元気な革靴)なんて、まさにそんな。好きだけど。 …

模造記憶/フィリップ・K.ディック 訳 浅倉久志他

すっかり滞っておりました。 引っ越して、通勤時間が一気に1/4くらいになったので、電車の中での読書が進まない日々。そんななか、今年もつづくSF…というかフィリップ・K・ディック。友人がたくさん持っていて。お願いして片っ端からお借りしております。感…

サウスバウンド/奥田英朗

あけましておめでとうございます。昨年秋からの読書は、あとで詳しく感想を…と思ってメモにとどめておいたらそのままになっているという駄目な感じです。年末に引っ越したので、そのあたりは本も荷造りしてしまって読めていなかったし。 年明け一冊目(文庫…

ディック作品集 マイノリティ・リポート/フィリップ・K.ディック 訳 浅倉久志

映画は未見。面白かったです。マイノリティ・リポート―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF)作者: フィリップ・K.ディック,Philip K. Dick,浅倉久志出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1999/06/01メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 54回この商品を含むブログ (76…

ディック傑作集〈4〉まだ人間じゃない/フィリップ・K.ディック 訳 浅倉久志

タイトルがすごいよね。ディック傑作集〈4〉まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫SF)作者: フィリップ・K.ディック,Philip K. Dick,浅倉久志出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1992/04メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (17件) を見る

ワールズ・エンド(世界の果て)/ポール・セロー  訳:村上春樹

村上春樹翻訳ライブラリーの1冊。 舞台は世界各国、いろんなシチュエーション。「文壇遊泳術」なんて、日本人の近代作家も書きそうな話だ。皮肉たっぷりだけど、スマート。「真っ白な嘘」はなぜだかクリスティを連想。慣れ親しんだ村上春樹の日本語だからす…

間宮兄弟/江国香織

文庫化待ってた一冊。 これもあとでまた。間宮兄弟 (小学館文庫)作者: 江國香織出版社/メーカー: 小学館発売日: 2007/11/06メディア: 文庫 クリック: 21回この商品を含むブログ (109件) を見る

優雅で感傷的な日本野球/高橋源一郎

初高橋源一郎(たぶん)。タイトルに惹かれて手にとってしまいました。7編からなる短編集で、それぞれ構成もナニもかも違った話なのだけれど、実はなにやら繋がってる… というつくり自体は嫌いじゃないのですが。 うーん。ただしかし。ぐだぐだ。 高橋源一…

黄色い目の魚/佐藤多佳子

ある男の子とある女の子の、それぞれの子供の頃の出来事、成長する過程、そして高校生になって同級生となるふたりが、それぞれの視点でランダムに描き出される一冊。両親が離婚している彼、イラストレーターの叔父を持つ強情っぱりな彼女が、「絵」をきっか…

残虐記/桐野夏生

少女拉致監禁事件を題材にした小説。重たいのはわかっていて、覚悟を決めて取りかかったけれど、最近軽い読み物ばっかりだったからなあ…短いけれど、ずんときた。監禁事件の被害者であった少女が大人になって書いている手記のかたちを借り、その前後に注釈的…

パレード/川上弘美

傑作(とワタシは思っている)(てゆうか単に好きなだけか)「センセイの鞄」の続編…というかサイドストーリー…ツキコさんとセンセイが、普通に暮らしていたときの、ある日ある昼下がりの出来事を、そこだけ切り取りました、という超短編。(職場に行くのに…

ゴールデン・マン/フィリップ・K・ディック 浅倉久志・他訳

ディック傑作集3。「リターン・マッチ」、ほんと、筋が読めるのにどうしてこんなに面白いのかしら。「小さな黒い箱」を読んで、あれ、このマーサー教の話、どこかで読んだぞ?と。ワタシが唯一、くらいで読んだことあった「アンドロイドは電気羊の夢を見る…

時間飛行士へのささやかな贈物/フィリップ・K・ディック 浅倉久志・他訳

ディック傑作集2。SFハマリ、まだ続いております。ディックおもしろいー。 冒頭の「父に似たもの」から、ありがちなんだけど、わかってるんだけど、引き込まれるんだわ、これが。突飛な設定は確かにSFなのだけれど、中身は面白すぎる「小説」で、登場人物が…

アサッテの人/諏訪哲史

そういえば文藝春秋で読んだや、と思い出しメモ。今更ですが。 奇妙な言動をしだす叔父を甥である主人公が観察し、小説化したもの、という設定の小説。プロットのためのメモのようなものが、説明付きで繋がれる構成。叔父の話す奇妙な言葉は、あれは「吃音」…