吉原裏同心(三) 見番/佐伯泰英

吉原裏同心シリーズ、三冊目。佐伯泰英という作家は、スペインを舞台にした小説で名が売れた人だそうですね。少々停滞期に、これからまた売れるには、時代ものか官能ものしかない、と云われて時代小説に手を染めた(と云うのか?)そうですが、小気味よい語り口と丁寧な描写、向いてたのだろうなあ、と思えます。
今回は幾つか小さな事件が重なるものの、ひとつのストーリーを一冊で完結させるもの。老中田沼意次の失墜後、繋がりの深かった吉原の会所に取って代わろうという見番大黒屋の暗躍を裏同心神守幹次郎が打ち砕くわけですよ。松平定信の名も出てきて、深川在住の身としてはちょっとわくわく。
オモシロイ。と思う。ただ、池波正太郎に慣れた身には、人物描写がちょこっとだけ物足りないかも。たまに詠む歌が、幹次郎と妻汀女の人柄を伝えるとしても、もう少しなんかエピソードがあると嬉しいんだけどなあ。

見番―吉原裏同心〈3〉 (光文社時代小説文庫)

見番―吉原裏同心〈3〉 (光文社時代小説文庫)