残虐記/桐野夏生

少女拉致監禁事件を題材にした小説。重たいのはわかっていて、覚悟を決めて取りかかったけれど、最近軽い読み物ばっかりだったからなあ…短いけれど、ずんときた。監禁事件の被害者であった少女が大人になって書いている手記のかたちを借り、その前後に注釈的に「現実」の声が入る。「事件」ではなく「その後」の話。中心の手記の部分も十分に刺激的というか、濃くたちこめる湿った空気の中で語られるあれこれはフィクションとノンフィクション…小説内小説の度合いを怪しく変化させて凄みを見せるのだけれど、結末、手記後に添えられた手紙が、すごかった。わけもなく鳥肌。ぞっとするときのね。
残虐記というタイトルは谷崎作品からもらったそう。いろいろ、うまいよなあと思う小説。そして迫力。

残虐記 (新潮文庫)

残虐記 (新潮文庫)