あたまのなかにある公園。/糸井重里

このとき↓
2008-10-28 - kaya的読書記録
以来の糸井さんのエッセイ。ほぼ日に書かれているものをまとめているので、読んだことあるのが多いのですが、まあ買ってしまう。

小説じゃなくてエッセイがいい。押しつけがましいのは苦手。にやりとしたい。内容がないのは嫌い。ちょっと手応えが欲しい…。というときに読む感じ。
凝ってる装丁。手触りだけでも気持ちいいので、たまに手に取りぱらぱらめくっています。たぶん買ったの去年だなあ。これ。

ほぼ日刊イトイ新聞 - あたまのなかにある公園。

好きだったの。

桜のいい香りの、化学的な成分は、
クマリン」という名前なんですよね。
なんだ、その偶然のことばの響きのかわいらしさは?!

「ゴールは遠いなぁ」と、がっかりするのも道のりです。

「こころって、胃か?」とつくづく思いますよね。

吉田屋とヒント/吉田裕子

京都のとても素敵なお店「吉田屋料理店」の裕子さんが書かれた一冊。3月末に行ったときにお店で購入。
「ちょっとかわった器のコレクション、旅先の美味しいものの話、旅にまつわる話をたくさんの写真とともに書き下ろしました」
…のご紹介通り。台湾、韓国からトルコ、フランスなどなど世界各国の料理や、それを食べたときの思いや、作ったときのこと、そして吉田屋でも使われているおもしろくて素敵な食器について。
ああ、そういう軽いエッセイね。などと決して思われたくない、深さと面白さがあります。著者の吉田裕子さんとはお店でしかお会いしたことがないのですが、何というか、ものすごく、地に足がついている感じというか。揺らがない芯から放つオーラがある方だと勝手に思っています。書かれる文章はかなりさっぱりしていた。料理の味付けに対する分析などそれもとても好み。
まあとにかくとてもおなかがすきます。


BCCKS / ブックス -

オリガ・モリソヴナの反語法/米原万理

翻訳家米原万理さんの初小説。エッセイはたくさん読んでいましたが、小説は初。
チェコプラハソビエト学校で過ごした小学生時代…というのは米原さん本人がエッセイでさんざん書かれていたご本人の体験そのままの設定。そこで出会った強烈な教師オリガ・モリソヴナという女性の謎を、大人になった主人公が当時の同級生と解き明かす謎解きがメインの話。
先に言ってしまうと、要所要所で協力者が現れて、偶然が起きたりして、あまりに都合よく謎が解け過ぎてしまって、そのへんは謎解きとしてはとても物足りない。
でも、謎の中身がとても魅力的かつ深いもので、ぐいぐい引き込まれてしまって、それだけで読んだ価値はあると思わされています。過酷なスターリン時代の粛正の嵐を、登場人物たちはどう体験し、もしくは必死に生き延びたのか。小学生時代の、あの出来事の裏にはどんな真意が隠されていたのか。ロシアを体験し、長くつきあってこられた米原さんだからこそ書けた一冊なのだろうなと。

オリガ・モリソヴナの反語法

オリガ・モリソヴナの反語法

わたしいる/佐野洋子

小説…でいいのか。佐野洋子さんの、自叙伝的な部分もあるのだろうか、挿画もたくさんの一冊。こどもの体験、思い、想像。「あの頃はこうだった」ではないです。こどもの目線の、こどもに起こる出来事が短編で綴られる。あざとさなんて微塵もなく、なんだろうな、佐野さんの、いつもの「むき出し」な感じがやっぱり好きだと思って読んだ。
かべのしみが旅行かばんを持った男の人みたいで、見ているうちに、男が出てきて、蒲団の上を横切って行ったり。
そういうことが、本当にこどもの目を通して見ているように感じられる。…と私の文章で説明するとなんとつまらなく聞こえることか!解説は川上弘美で、そっちもよかったです。
佐野洋子さんは、いろんなことをこうして思い出させてくれる。」

わたし いる (講談社文庫)

わたし いる (講談社文庫)

京都の精神/梅棹忠夫

まーた時間があき過ぎて、何を読んだっけこの間…となっておりますが、思い出せるところで。梅棹さんの本を何か一冊、と春先に出掛けた大阪民博での展覧会で買ってきた一冊。
京都についてひたすら語る講演の記録がメイン。
京都という都市の、その特徴、意味、価値、これからどうあるべきか、等々を、熱く熱く語られている。そうかー、これが「京都」のひとの「京都観」か、と、圧倒される。
勿論、全京都人がこうではない、とわかってるつもりの上でだけれど、東京生まれ千葉の新興住宅地育ちで故郷もない(両親も東京生まれ)ような自分みたいなふわふわした人間にとって、自らの出自をとても重く価値あるものとして扱い、その故郷を強く思う気持ち、というのは想像上のものでしかなかったことがよく自覚されました。京都というのは勿論素晴らしいところであると思うのだけど、特に、そこに思いを注ぐひとの強さというのは格別なのであろうなと。
自分は、父方の祖父を辿るとどうも大阪、父方の祖母は名古屋らしいのだけれど、こちらはまったく交流がない。母方の祖父は広島出身で、行ったことはある、程度。母方の祖母は長野、遡ると、実は京都。そういえばそうだったな、と思い出しただけですが。

京都の精神 (角川文庫ソフィア)

京都の精神 (角川文庫ソフィア)

[小説]ろまん燈籠/太宰治

なんとなく気になって古書店で買ったものの長らく積ん読されてた1冊。中編程度のものから、とても短いものまで16編。太宰治32〜36歳頃の短編集。だから、と言えるほど大宰を読みこんではいないけれど、どれもこなれていて、安定感があるというか。読みやすいけれど軽過ぎない物語。表題の「ろまん燈籠」での兄妹たちの描写なんか、時代背景とあわせてとても好みだ。爺さんのメダルのくだりとか。
戦時下の暮らしや出来事を描いた話もいくつか。「禁酒の心」「鉄面皮」「散華」…戦時下の作家、などと言うと先日観た舞台「国民の映画」を思い出してしまうけれど、太宰治はそれなりに「書いていた」作家なのだろうな。くすりとさせられて好きなのは「令嬢アユ」。そのいたたまれなさにギャー、と叫びたくなりそうな「誰」。嫂が、なんというかうまい返しをする「雪の夜の話」などが好きでした。
解説は先に読むのをやめたほうがいいです。いろいろネタバレされてしまう。

ろまん燈籠 (新潮文庫)

ろまん燈籠 (新潮文庫)

ロシアは今日も荒れ模様/米原万理

米原さんブームもひっそりと続いていたり。これは未読だったもの。表紙のマトリョーシカがかわいい。いつもの通訳としてのエピソードいろいろだけれど、これは特にソ連…ロシアという国に焦点を絞って書かれている。冷戦の終結ゴルバチョフエリツィンの人となり、そして国民らの姿勢や当時の考え方、現地でしかわからなかったことなど。国の指導者たる人たちの人間性をかいま見ることが出来た一級の通訳という立場だからこその米原さんの分析が冴え渡ってる。
いまもむかしも、個人的には決して親近感の持てる国ではないけれど、この本を読むと、なかなかどうして、面白味の有る隣人でもあることがわかる。どうしようもない酒好き、というのを紹介するエピソードのひどさと多さに笑った。
そしてやむを得ずついた嘘の通訳の話(アゼルバイジャンウォッカ)には唸らされる。咄嗟のときの頭の回転のはやさって、憧れるわー。

ロシアは今日も荒れ模様 (講談社文庫)

ロシアは今日も荒れ模様 (講談社文庫)