オリガ・モリソヴナの反語法/米原万理

翻訳家米原万理さんの初小説。エッセイはたくさん読んでいましたが、小説は初。
チェコプラハソビエト学校で過ごした小学生時代…というのは米原さん本人がエッセイでさんざん書かれていたご本人の体験そのままの設定。そこで出会った強烈な教師オリガ・モリソヴナという女性の謎を、大人になった主人公が当時の同級生と解き明かす謎解きがメインの話。
先に言ってしまうと、要所要所で協力者が現れて、偶然が起きたりして、あまりに都合よく謎が解け過ぎてしまって、そのへんは謎解きとしてはとても物足りない。
でも、謎の中身がとても魅力的かつ深いもので、ぐいぐい引き込まれてしまって、それだけで読んだ価値はあると思わされています。過酷なスターリン時代の粛正の嵐を、登場人物たちはどう体験し、もしくは必死に生き延びたのか。小学生時代の、あの出来事の裏にはどんな真意が隠されていたのか。ロシアを体験し、長くつきあってこられた米原さんだからこそ書けた一冊なのだろうなと。

オリガ・モリソヴナの反語法

オリガ・モリソヴナの反語法