シルトの岸辺/ジュリアン・グラック 訳 安藤元雄

シルトの岸辺 (ちくま文庫)
読み終わるのに珍しく3週間くらいかかった。都市史の大先生が絶賛していたので手をつけてみたものの…。フランス近現代文学。架空の時代の架空の国オルセンナ。海を隔てた国ファルゲスタンとは300年にわたる暗黙の停戦状態。その前線シルトに監察将校として赴いた「私」アルドーが主人公。
ヴェネツィアを彷彿とさせる、てーのは解説にも書いてあるしくだんの大先生もおっしゃられていたのだけれど、今ひとつピンと来なかった…。まあ確かに、イタリアの中世都市国家がそのまま300年生き長らえてたらこんなかもなあ。そういう眠れる都市と国家の物語、かな。筋はかなり起伏に乏しく、淡々と、日々を堆積させてうねりを表現する感じ。とにもかくにも表現がまだるっこしく、それを繊細と捉えることも出来るのかもしれないけれど、抱いた感想は「冗長!」でした。原語を損なわないスバラシイ訳(解説による)らしいのですが。。。
一例。遠くに見えた山の描写

そして、はるか高く、遠くうつろな闇の上空に、うなじの直線をえがいて垂直に、みだらな貪欲な吸盤一つで空に貼りついて、虚無の泡の中から湧き出たいわばこの世の終末のしるし、乳白の物質でできたほの光る一本の薄青い角が、微動だにせず、永遠に異質の、凄絶な姿で、さながら空気が奇妙に凝り固まったように、ぽっかりと浮かんで見える。

ムキー!となりませんか。