千尋の闇 /ロバート・ゴダード 訳 幸田敦子
読み始めたら止まらなくなる本、という括りで取り上げられてたので興味を持って購入。1997年の文庫翻訳ミステリー作家評論家が選んだベスト1、でもあるらしい。
失業中だった歴史学者が、1900年初頭のイギリス政界に絡んで起きた事件を解き明かしていく物語…。話の軸はかなり濃厚で、現代の描写にある青年政治家だった人物の回想録で綴られる過去が織り込まれ、進められる。青年政治家を陥れた陰謀はあったのか、それとも回想録が偽りなのか、調査を依頼した実業家、引き込んだ友人、親族、魅惑的な女性、どこまでが信じられる、意図された展開なのか、等々二転三転する状況に引き込まれはします。
でーもなー。一人称の主人公、歴史学者のラドフォードが。どうも駄目でして。人間味あふれているのかもしれないし、この性格が物語を進展させているのかもしれないし、こういうときの主人公がいつもスーパーマンである必要もないことはわかっているけれど…でも、その弱さに読んでいて腹が立ってきてしまうのだからしょうがない。なんでそこでそう思う!とかな。小説自体、ラドフォードがあとで振り返って綴っている形式なので、「今になって思えばこうだった…」的言い訳が入るのも、潔くないんだよなー。もー。