友だちは無駄である/佐野洋子

前半は対談風。佐野さんが、どなたか名乗らない「ぼく」との対話の中で、どのような子供時代を送ったのか、友だちについてどんなことを考え、感じていたのか語る。合間合間に、佐野さんの地の文章が挟まる。自分を良く見せようなんてしていない、むき出しの体験の記憶がそのまま出てくる感じ。最初の、誰かと過ごす記憶は「兄」だという。生まれたその瞬間から、上の子が常にいる下の子の気持ち、わからないかも。私自身が「上の子」であり、「血を分けた兄弟」にそれほどつよいシンパシーを感じずに来ているからか。
小学校の、中学校の、高校の、大学の、そしていまに至るまでの「ともだち」づきあいが赤裸々に出てきて。
全然、啓蒙とかしてないです。道徳に訴えもしない。
無茶苦茶な理屈。佐野さんもかなり性悪な発言していたり。
こうあるべき、というのも何もなく。…元は中高生向けの読み物として出された本らしいです。
どうしても自分に照らして考えてしまうけれど、「ともだち」について・「ともだち」とは、なんていつから悩まなくなったのだろう。中高生の頃は、気にしていたようにも思うのだけど。いや、小中学生までだろうか。今は特になにも考えなくなったようにも思うけれど(恵まれているとは思う)、苦手なあの子を、苦手だと思うのは、自分と似ているからなのかも、なんて気が付いて愕然としたりしていた自分は、やっぱり今もあんまり成長していない気もする。
どなたか名乗らない「ぼく」は佐野さんのあとがき?で明かされます。おお。

友だちは無駄である (ちくま文庫)

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