算法少女/遠藤寛子

江戸時代、実際に出版された「算法少女」という算数(数学)読本があるそうです。父に算法の手ほどきを受けた「千葉あき」というむすめが著したとされています。この小説は、実在する「算法少女」をもとに、架空の人物と実在した算法家とを登場させて創作された物語。もとは「少年少女歴史シリーズ」として出されたもの。
ひょんなことから、町むすめである「あき」の算法上手が知れて、有馬のお殿様から、姫の家庭教師役を依頼されるのだけど…算法の「流派」の違いや身分の問題で横やりが入ったり、あき自身も自分の歩む道を迷ったり。日本の算法…和算は、江戸時代かなり進んだ学問であったのに、派閥争いなど含め頑なで、殻に閉じこもりがちであったために西洋の数学に太刀打ちできなくなったそうな。そんな前提を踏まえつつ、子供向け時代小説としてあたたかくて優しいものがたりでしたよ。
長らく絶版となっていたのを、全国の数学の先生だったりが熱心に復刊を願って、もろもろ幸運も重なり、ちくま学芸文庫に収録されることとなったそうです。恵比寿アトレの有隣堂でおすすめされてたので手に取った一冊。あそこの文庫オススメの選書は楽しくてステキでした。

算法少女 (ちくま学芸文庫)

算法少女 (ちくま学芸文庫)