東京夜話/いしいしんじ
「『ぶらんこ乗り』の前史時代」「幻のデビュー短編集」、『とーきょー いしいあるき』という昔の本の改題で文庫化されたそう。というわけでむかしのいしいさんの小説。東京のあちこちの町が舞台となる。下北沢だったり、浅草だったり、銀座だったり。主人公も、人だったり犬だったりマグロだったりで、もうあっちこっち、好きなように進められる「ものがたり」達でした。とても面白かった。
下北沢では、夜中に、秘密裏に、生ゴミが収集されている…という出だしの一編からしてヤラれた。誰かに話したくなる感じなのだ(そして話した。笑ってもらえた)。
マグロの人生(魚生?)の語り口は最近の長編「ポーの話」に通じるものがありました。神保町のカレーのはなしは、ちょうどこのまえ友人らとそんな話をしたのもあって、もうカレー食べたくてしょうがなくさせられたし…。にやりとしながら読み進めて、終わるのが惜しい、そんな一冊でした。いしいしんじ入門編に一番いいかもしれない。