ウランバーナの森/奥田英朗

ウランバーナの森 (講談社文庫)
奥田英朗3冊目。これは…なんと言ったらいいのやら。フィクションである。でも設定は、ある。主人公は「ジョン」という名で、リヴァプール出身。ちょっと前までは世界的なポップスターだった。今は、日本人の妻「ケイコ」の実家が軽井沢に持つ別荘に来ている。ここ数年、夏休みはここで過ごす。かわいい盛りの息子「ジュニア」がいる。しばらく創作活動はしていない。日本人の家政婦さんも通いで来てくれるが、自分は「主夫」として生活している。
そんな夏に起きた突然の身体の不調から、「ジョン」は追いつめられてしまう。悩んだりぼやいたりもする。病院に通う。過去を思い出す。リヴァプールを、ブラックプールを、ハンブルクを。日本の「お盆」は正確には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」、その語源はサンスクリットの「ウランバーナ」という言葉なんだとか。そんな時期に、霧深い軽井沢の森でジョンが出会う「過去」と癒し。そんな小説。
奥田英朗は、彼の伝記の空白の部分を描いてみたい、との思いでこれを書いたそうです。あくまでフィクションとしてですが。マニアの方には当然の蘊蓄やネタがちりばめられているらしいですが、残念ながらそれはわからず。熱心なファンの方にはどう受け取られるのだろうな。とにかく「ジョン」はかなりすっとぼけたりもする人間味あふれる人物として出てきますよ。