日本沈没/小松左京

日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1)
1973年の出版当時、上下巻あわせて400万部売れたという本。大規模な地殻変動により、日本列島が古代伝説のアトランティスのように沈む、という話。学者が頭脳を振り絞り、政府が頭を抱え、技術者が酷使され、密かに海外への交渉が続けられ、対立があり、仮説が立てられ、ひとりでも多くの国民の国外脱出を、人命救助を、と。圧倒的なヒーローが現れて日本を救ったりはしない。最初主人公なのかと思った潜水艦技師?の小野寺も、途中からそんなに出てこなくなるし(最後はまた出てくるけど。玲子とか意味あったのか?)。
日本沈没が起こる科学的理論の展開にかなりのページが割かれている。小難しすぎてところどころ飛ばし読みしましたが、とにかく膨大な調査に基づいたSF的社会派小説か。想像もつかない事態へのさまざまな対策に、なるほど、と感心しつつも、大地震が続き、あらゆるところで火山が噴火する大惨事の描写と、語られずに終わる沈没後の世界へ散らばった日本人へ思いをはせたり、比較的重い読後感でした。国民の避難計画を立てた学者が、極論として、何もしない、というのもある、と語るあたりに日本人を感じてみたり。
あと余談。自分は、閉ざされた空間で水攻め、というのにものすごく恐怖を感じることを自覚。調査のために潜水艇で深海に潜る場面や、地震津波で地下鉄・地下街に流れ込んだ水…の描写がすごーく怖かった。想像するとぞわぞわする。「終戦のローレライ」でも感じた恐怖。