タンノイのエジンバラ/長嶋有

タンノイのエジンバラ
長嶋有2冊目。短編集。この人の文章、好みだ。一編一編、雰囲気は結構変わるのだけれど、多かれ少なかれ「家族」が描かれるのが共通項か。図らずも「夜のあぐら」と「三十歳」の2編が独身同世代女性が主人公で、あー、と思わされ。大して年が変わらない(長嶋有は1972年生まれ)男性が、女性視点をそれほどの違和感なく書けるのが、謎。「バルセロナの印象」は主人公と妻と姉とのスペイン旅行記だけど、「妻」が結構魅力的。姉とのクリスティのエピソードも、作り込みすぎてなくて、いいなあ。中では「夜のあぐら」が、短編ならではのまとまり感があり、人間関係が意外と複雑で時制も動くのにほどよく立体的に構成されていて、なんというか、短編小説として好きな完成度でした。表題作「タンノイのエジンバラ」はスピーカーの種類(?)だそうで、なんか呪文のようなタイトルだが響きがよいなあ。とほめごろしみたくなってしまった。手放し大絶賛じゃないけども。