冒険の国/桐野夏生

冒険の国 (新潮文庫)
1988年第十二回「すばる文学賞」最終候補作のリメイク、ということで元は桐野夏生デビュー前の作なのかな。昨日のに引き続き、図らずも31歳独身実家暮らしの女性という微妙な設定が近しい主人公…。この本では36歳の姉もまだ実家にいるんですけどね。そして舞台は浦安。ディズニーランドも重要な役割を果たし。京葉線は開通前工事中。タイトルから勝手にサスペンス系を想像してたら全然違いましたよ。主人公と姉、両親、死んだ幼なじみとその兄、仕事場の人々…まあ日常を描くのだけれど、かなり硬めの空気。閉塞感…苦しい。ああ。あのとき、10年以上前のモヤモヤが。最後は救いがあるのかな、と思ったら鬱屈した気持ちがイヤな感じに噴出したところで終わるという。読ませるけれど、すっきりする本ではないなあ。でも何かこのリアルさが止められない感は強い。そしてこうして比べちゃうと、長嶋有が描く女性に対して桐野夏生の女性は底意地が悪くてやらしいです。ああ、女って…こっちがホントかなあ。短いのですぐ読めます。