ドグラ・マグラ/夢野久作

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)ドグラ・マグラ(下) (角川文庫)
時間かかりました…。文庫上下巻。そんなに長くはないはずなのに、流し読みが出来ないのですよ。ぐぅっと入り込んで、見失わないように注意深く。そしてまたスチャラカスチャラカ謡っていたり、事件記録だったり、古文書風だったり新聞記事抜粋だったりの文章も混じるので、それも一苦労。ああでも面白かった。読み終えて達成感。
心理遺伝、精神病理…全てなんとでも理屈がつくキチガイじみたある事件の真相に一歩ずつ近づいて行く小説なんですが、語り部の主人公は記憶喪失中。取り巻く登場人物も精神学者に法医学者やら絶世の美女やらどこからどこまで何なのやら。濃かったなあ。それにしても。全く明るい要素はないようなんだけど、舞台となる九州帝大の精神学校舎だか何だかの晴れた空に浮かぶ青い建物の姿の描写が妙に生々しく記憶に残りました。
そして、この小説の理解はこれでいいのやらわかったのやらわからないのやら…と思ったら、解説なだいなだが「みんなそうだろう」と言ってくれたので救われた気になったり。ちゃんとドグラ・マグラ論なんてのを展開してくれてる評者も紹介してくれていたり。さらりと。何てことないけど即妙な解説。
そうして一応大絶賛夢野久作なんですが、もしこれから手を着けようという方がいましたら、絶対にドグラ・マグラからは読まない方がいいと思われます…。入手しやすい短編集から入って、大丈夫だと思ったら、そしてココロの準備が出来てから、読んだ方が確実に楽しめると。思います。