ことばの食卓/武田百合子

ISBN:4480025464
ワタシの周りでちょっと前にひっそり流行っていた?武田百合子さんの随筆短編。初めて読みました。とても素敵な文章。って陳腐だな。もっと、こう。なんて言えばいいのだろうか。すっきり、しっとりしている。じめじめではなく、日本語がとても心地よさそうに使われている。このちくま文庫の、行間字間がゆったりな組み方と、野中ユリさんの挿画も相俟って、何とも云えずしっくりくる一冊。好きだ。
「上野の桜」という一編の最後がとてもよかった。上野の桜を見て、古道具屋で柱時計を買う。帰り際路頭で、包まれたそれが鳴り出す。5つ。次は一つだから電車の中で鳴ってもいい。でもその次、6つ鳴るまでには家に帰りつかなくては、という。それだけなんだけど、いい。いいんだ。とても。