ノーザンライツ/星野道夫

星野さんブームはまだひっそり続いております。
これまでに読んだ2冊で断片的に取り上げられていた事件や人物について、幾つかテーマが設定されて、詳しく述べられております。文春文庫と順序がよくわからなくなっていたけれど、この順で読んでよかったかも。(これは新潮)
何度か、素晴らしい友人として紹介されていたシリアとジーニーについて。ふたりは星野さんと出会った頃には既に「高齢の女性」として描かれていて、でもどこかで「パイロット」とも書かれていて。アラスカで暮らす高齢の女性パイロット?と、半分無意識に、自分の常識外の設定だなあと感じていたのだけれど、今回の本でその生い立ち的なもの、アラスカへ来た経緯などがわかって素直に驚嘆。アメリカの、そんな時代のそんなふたりの女性の、たくましさと賢さが素敵。
シリアとジニーの話から、アラスカを変えた大きな出来事、「プロジェクト・チェリオット」について、話は展開していく。幻に終わった、アラスカを敷地とした核実験計画。第二次世界大戦の終わった後のこと。その威力を試すために、データを得るために、プロジェクトリーダーは自分では足を運んだこともなかった地図上の土地を計画地とした。関わった人たちの気持ち、扱い、はからずも、アラスカの人々を団結させることになった反対運動。
不勉強ながら、ちっとも知らなかったこの幻の計画があり、今のアラスカがあり…。
当たり前だけれど世界は本当に広くて、それこそさっき書いた「自分の常識」的なもののちっぽけさと来たらたまらないのだけれど、そんなことを実感させてくれながら、でも身近であたたかい文章で綴られるこの本のすごさ。
シリアとジーニーと出掛けたアラスカの川をめぐる旅の記録は、完結しておらず、巻末にシリアの書いた一章が掲載されている。これを読むと、星野さんの奥さんや息子は元気なのかなあ、などと余計なことも考えてしまった。だいぶ遅い出会いではあるけれど、少しずつ関連の本など読み進めていきたいなあと、また思う。

ノーザンライツ (新潮文庫)

ノーザンライツ (新潮文庫)