白洲正子自伝/白洲正子

白洲正子白洲次郎、なんだか、数年前(から?今も?)にひそかにブームではありませんでしたか。ワタシはきっかけを知らないのだけれど、本屋で多くの関連書籍を見たように思います。そう、本屋の、面出しされてる本で知った名前。その後も生半可な知識だけで、特に興味を惹かれていたというわけでもなかったはずが、なんだかはずみで手に取りました。
でも、面白かった。ちょっと独特なお嬢様。奔放な感じは育ちの良さそのままなのだろう。それでも、確かな審美眼と、あと、この「読ませる」文章力。幼い頃にはまり、お稽古ごととして描かれる「能」は、今のワタシには遠い芸術だけれど、ひと昔前には、確かに日常に(それは勿論だいぶ高尚な日常であると感じるけれど)生きる芸術であったのだなあ、とか。壮大な土地を持つ別荘の描写であるとか、戦前のアメリカへの留学だとか。幼い日の思い出から、白洲次郎との結婚、銀座で民芸品などを扱う「こうげい」を経営する話、世界各国での買い付けの体験であるとか。堅苦しい「自伝」ではなく、淡々と語られる思い出話口調で、ぐんぐん引き込まれました。面白かった。

白洲正子自伝 (新潮文庫)

白洲正子自伝 (新潮文庫)