家守綺譚/梨木香歩

家守綺譚 (新潮文庫)
祖母の枕元で少しずつ読んだ短編集。
文筆家「綿貫征四郎」の一人称で語られる。学生時代に亡くなった友人の実家が空くことになり、その「家守」として暮らすことを頼まれた綿貫と、庭の草木や隣のおかみさん、犬のゴロー、山の和尚、ダアリヤの君、などの周りの人々との日常。あ、死んだ友人「高堂」も。
明治時代くらい、京都の方の設定だろうか。感情を持つ植物も、河童やら鬼やらも、異世界からの訪問者も、ふつうのこととして語られる。飼い犬ゴローは、実は河童とサギの喧嘩を仲裁して以来、もめ事の仲裁犬として有名だったり。
最初と最後の2編が主人公の気弱なのだけれどマジメで真摯な性格がよく出ていて面白かったかな。短編のタイトルは「サルスベリ」「野菊」「ふきのとう」「山椒」などすべて植物の名前。「南蛮ギセル」なんて知らなかった。四季折々の空気も楽しめます。そして日本語が美しい。