オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎

オーデュボンの祈り (新潮文庫)
難しい…。感想が。8割あたりまで読んだ段階では、駄目だー、と思ってた。鎖国同然の仙台沖の島・喋るカカシという設定は突飛だし、何より、登場人物に「気持ちよい人間」が出てこないのだ(魅力あるのは草薙の嫁の百合とうさぎくらいか)。主人公がスーパーマンである必要はないのだけど、出てくる人間出てくる人間、ワタシの好みとしては苦手・苛つく感じというのはあまり楽しくない。
話はその「荻島」という隔絶された島に、仙台で犯罪を犯した主人公・伊藤が逃げてきたところから始まる。島には未来を見え、広く世界を知る、喋るカカシ「優午」がいる。島特有のルールや島民の描写と、数日間にたたみかけるように起きる出来事。島の歴史が語られ、並行して仙台で起きている気分の悪い経過が挿入される。はりめぐらされる伏線。
最後にすべてが繋がる。何でもないように見えたことすべてがひとつに収束して、悪は倒れ、島に欠けていたものがうまる。確かにすごい。こんなプロット、よく考えついたなあ、と感心出来る小説。読後感も悪くなかった。ちょっと人死にすぎだけど。
あーでもなあ。その「何でもないように見えたエピソード」たちが、そこだけだとつまらないというのは、やはり惜しいんじゃないだろうか。山頂の景色は良かったけれど、8合目までつまらない山登り…。微妙だ。