貴婦人Aの蘇生/小川洋子

貴婦人Aの蘇生 (朝日文庫)
久々の小川洋子朝日文庫の新刊をふと手に取ったら、解説が藤森照信!思わず買ってしまいました(藤森照信:建築史家・建築家・破天荒な先生)。主要な登場人物は大学生の私、伯母のユリア…もしくは皇女アナスタシア、ボーイフレンドのニコ、剥製コレクターのオハラ。
自らをロマノフ朝の生き残り・皇女アナスタシアだとして、入院している病室のあらゆるものにイニシャルのAの刺繍を施す老女…というのは、小川洋子の何かの短編で使われていたモチーフだよね。物語はそこから始まります。淡々と静かに、剥製に囲まれた古い洋館での生活が語られ、ロマノフ王朝の秘密は大きなテーマに。細かな蘊蓄がちょっと面白い。伯母さんの真意も真実も結局はあやふやなまま終わるのだけど、物語にはしっかり幕が引かれる感じです。
相変わらず静かで冷たい空気の小説。いつも死の匂いがしている。白い漆喰の壁のイメージだ。最近読んでた北村薫は、暖かみのある色のモルタル塗りの感触だった。アールがついてるの。