薬指の標本/小川洋子
この方らしーい、静か、静謐な中編2編の一冊。表題作は、奇妙な標本作製所?の話し。淡々と、主人公と標本技術士の弟子丸氏の生活が綴られ。靴のエピソードとかふたりの逢瀬とかエロティックだったり、いろいろあるんですが、ココロ奪われたのはその「場所」の設定で。そこはもとは女子専用のアパートメントだった、中庭のある古いアパートなんですよ。地下があったり。受付室とか浴室があったり。もーそしたら浮かぶのは具体的な某同潤会アパートの光景ばかりで。まあ設定上それはないな、という情景もあったのだけど勝手に変換していたよ…。ここまでそんな縛られて想像しながら読んだのも珍しいなあ。
2編目は「語り小部屋」というなんでも吐き出せる小部屋が出てくる。ワタシだったら何を語るだろ。今日一日遠出しながら考えていたことだとか。