けものたちは故郷をめざす/安部公房

どこかで、無人島に持っていく一冊にこれを挙げていたひとがいたのを目にして、買ってみた。かなり傷んだ古本で。最近軽いものばかり読んでいたので、消化不良を起こしそうな重みでしたが、ちょうど実家に帰る用事が続いたので行き帰りで一気に読めた。
(余談だけども、ここ数年の読書量のがた落ち理由は、通勤が片道15分くらいの職住近接になったことと、iPhoneの導入が二大理由だと思っている。実家からは毎日往復で2時間は電車に揺られていた)
戦中〜戦後くらい、満州で、ロシア人のもとで給人のような仕事をしていた日本人の青年が、日本へ戻ろうとする(と言っても生まれは満州である)話。か。飢えと渇きと寒さと恐怖と、人間の汚さと、不条理と、惨めさと…。途中で、何を求めているのか見失いそうになる。暗くて厳しい世界。小説として、滑り出しが秀逸だった。最後は少し乱暴な終わり方の印象。
遠い話ではあるけれど、少なくとも自分の祖父母は生きていた時代、父母が生まれた時代なのだよなあと思う。

けものたちは故郷をめざす (新潮文庫)

けものたちは故郷をめざす (新潮文庫)