ちょっとピンぼけ/ロバート・キャパ 川添浩史・井上清一訳

報道写真家ロバート・キャパの若い頃の手記。エッセイじゃなくて随筆というか…と思ってましたが、手記、というのがしっくり来るな。
アメリカの従軍写真家と勝手に思いこんでおりましたが、彼自身はハンガリー・ブタペスト生まれなのですね。母国から脱出し、ヨーロッパ、アメリカと巡った彼には戦争突入時しっかりした身分証明書がなく、それにまつわるドタバタから話が始まる。実績と愛嬌と腕とで正式な報道写真家として雇用され戦地に赴いた彼と、出会う人たちそれぞれが魅力的で、ユーモラス。恋愛も語る。その一方で、「戦争」について、現場で思ったこと感じたことそのままに語るその言葉は率直。一番印象的だったのは、これを読む数日前、D-DAYにあたる6月6日にたまたまネットで映像を見ていたノルマンディー上陸作戦のときの描写。
翻訳をした&手伝ったメンバーはパリでキャパと親しく過ごした日本人たちであるというのも知らなかった事実。私のよく知る名前から挙げれば坂倉準三などと同じ時代に彼らはパリで一緒にいた。
戦争は遠くて、実感として何かとらえたことはなかったけれど、間違いなく私の祖父母世代は経験したこと。私はいま生まれて34年目だけれど、私の生まれる34年前は日本が戦争に突入した時代だ。そんなに遠いことではないのだな。

ちょっとピンぼけ (文春文庫)

ちょっとピンぼけ (文春文庫)