旅をする木/星野道夫

とてもよかった。
アラスカの自然に焦がれ、単身アラスカに渡り、アラスカ大学野生動物学部で学び、写真家となり、アラスカで生きることを選んだ星野さんが描く北の景色のエッセイ集。訥々とした語り口。はじめのほうの、手紙口調の文章に、単純ですが胸が締め付けられるような気持ちになってしまった。技巧とか衒いとかのない、とても深くて静かな語り口で、空から見たアラスカを、海で感じるアラスカを描写してくれる。彼の文章には、カナダもアメリカも、山も海も川も、いずれも自然そのものや、野生動物、そしてそこで暮らすエスキモー、インディアンらへの深い崇敬、そして愛情が溢れてる。

エッセイ・随筆というより紀行かも。星野さんの名前も知らず、ふと手に取った一冊でしたが、私にとっては珠玉でした。表題通り、旅をする木のようにさすらい、さまよっていた星野さんが根を下ろし生活を始め、多くの人に祝われる結婚お披露目の日の話はとても素敵だ。先に表紙折り返し部分の著者紹介など読まなければよかった。解説は実際の友人でもある池澤夏樹。もう一冊出ている著作「長い旅の途上」も是非読みたいと思う。

旅をする木

旅をする木