海 /小川洋子

久々に小川洋子を買った。短編集。うすい。
巻末に、小川洋子のインタビューと、文章量多めな解説つき。
ふつうに小川洋子っぽいと感じた「海」は、婚約者の実家に、結婚の挨拶に向かう「僕」の話。婚約者泉さんには風変わりな弟がいて、ある楽器の演奏者だという。そうだ、小川洋子といえば、「弟」ではなかったか、と久しぶりに思い出した感じ。
もうひとつ、ぽいなあ、というのに加えて、好きだったのは「バタフライ和文タイプ事務所」。主に医学生の論文を打つのが仕事の和文タイプ事務所につとめる「私」、漢字、鉛の活字の艶めかしさ。欠けてしまって、交換しなくてはならないのは「糜」だったり「睾」だったり。「沈黙博物館」や「薬指の標本」を思い起こす、静けさと登場人物。
ラストの「ガイド」はふつうに好きでした。不完全なシャツばかりつくる「シャツ屋」がいいわ。

海 (新潮文庫)

海 (新潮文庫)