モナ・リザは高脂血症だった 肖像画29枚のカルテ/篠田達明

新潮新書。歴史上のいろいろな肖像画から、そのモデルの病気や症状を類推しようとするお医者さんの試み。最もうならされたのは、レンブラント「バテシバ」。彼女の左胸に見られるちょっとしたくぼみは、進行した乳癌であろうという説。これは確かに医者としての見方だなあ、しかも現代に至るまで気づかれずにいたのだろう、なるほど、と。
それ以外の話は、絵だけから読み解くことはせず、書物や伝承からの推論も含めて、たとえば藤原道長が糖尿病であったことや、上杉謙信は脳溢血で亡くなったのだろう、と死に様を想像・描写してみせたり、歴史上の人物を診断というよりは持病想像、という感じか。西行法師の児童虐待、などちょっとこじつけっぽいのもあって残念。
医学的見立てとは関係のない話題でしたが、「昔の肖像画は一般に描かれた人物が右むきのものは本人をまえにして活写した作品、左むきの場合は絵師があとから家族や関係者にきいて想像しながら描いたものとされる」という豆知識、知りませんでした。(日本の場合だと思われます)

モナ・リザは高脂血症だった―肖像画29枚のカルテ (新潮新書)

モナ・リザは高脂血症だった―肖像画29枚のカルテ (新潮新書)