イザベラ・バードの日本紀行 上・下 /イザベラ・バード 訳 時岡敬子

今年の春に出た、文庫、新訳による完全版。ちゃんと読むのは初めて。上下巻のボリュームもさることながら、文字数も多い。じっくり読みたいのもあり、えらく時間がかかりました。
1878年明治11年の日本を訪れたイギリス人の女性旅行家であるイザベラ・バード(当時47歳)による旅の記録です。イギリスにいる妹に宛てて書かれた手紙をまとめたもので、そのときそのときの旅の過程での出来事、村々やひとの印象、観察が、とてもストレートに綴られます。横浜に上陸し、東京で過ごし、最終目的地を蝦夷(北海道)と定めて出発する東日本を北上する旅。通訳としてのお供をひとり(18歳!伊藤という男)連れ、くるま(人力車)もしくは馬、もしくは徒歩で厳しい道中を行き。西洋化する都市部や港湾都市、未開の内陸の村、風変わりに見える風習の数々。120年前の日本が、おそらく、あるがまま描写されており、ひたすらに面白い。
当時のイギリス人から見れば、それはそれは遅れて見えただろう山間の村々の様子があったり、一方で彼女を驚かす美しい田園や町があったり。読んでいて印象深かったのは、とにかく女性の一人旅で危険のない、無礼な行為や侮辱を受けることもない、希有な国である、と繰り返し賞賛されているところ。120年前の日本はそんな国で、今もそれはその通り…だといいですが。
バードは最終的に北海道へ渡り、いくつかの集落でアイヌの家に滞在し、その言葉や風習を観察します。また、船で横浜へ戻り、その後は京都や大阪、伊勢神宮も参ります。伝統文化、西洋化、未開の土地、先住民族。当時の日本のいろいろな部分を、外国人の目で観察して、描写して。読み応えのある旅行記

イザベラ・バードの日本紀行 (上) (講談社学術文庫 1871)

イザベラ・バードの日本紀行 (上) (講談社学術文庫 1871)

イザベラ・バードの日本紀行 (下) (講談社学術文庫 1872)

イザベラ・バードの日本紀行 (下) (講談社学術文庫 1872)