文房具56話/串田孫一

旅先の京都、しかも雑貨屋で購入。串田孫一さんが、文房具についてあれこれ語る56編。好きそうでしょ。好きでした。はい。
はじめの「帳面」(ノート、じゃなくて帳面)から、「ペン先」とか「アルバム」とか。「ぶんまわし」はコンパスのこと。これははじめわからなかったわ…。「手帳」だったり「朱肉」だったり、中には「書棚」「抽斗」なんて文房具の範疇じゃないものも含みつつ、子供の頃の思い出(ペン先同士をくっつけて、「輸血」したらインクが固まってしまった、とか)、おとなになってからのこだわり(無地の手帳がほしくて、束見本をつくる製本屋に特注してみたり)、などなど、ほんの数ページずつだけれど、一編一編引き込まれ、にやにやしてしまう。
特に、自分の昔を思い出してじんわりしたのは「色鉛筆」。「ボール紙に金魚が1匹か2匹」という色鉛筆の箱について読んでいたら、急によみがえってきたのだった。小学生の頃、お父さんが勤めている会社のものだから…と誕生日プレゼントに同級生・カンちゃんがくれたのが、色鉛筆のセットだった。白銀の山がデザインされた、赤い缶のケース。鮮やかな色。絵を描くことが大好きだった私は、ものすごく嬉しかった。
あれは、カランダッシュの30色水彩色鉛筆だった。水でのばして水彩のように描けるのも楽しくて、随分長く、いろんな技法も使って絵を描くのに使い続けた。贅沢なプレゼントだったなあと思う。そしてそうか、カンちゃんのお父さんはカランダッシュの日本支社だとかにお勤めだったのだろうか。彼女自身は今どうしているのだろう。

文房具56話 (ちくま文庫)

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