天下り酒場／原宏一

「床下仙人」がちょっと評判になっていた作家さん。
短編集。表題作は、県庁の役人が天下りで居酒屋の従業員に…という話。ほか、資格とりまくりの人をタレントに仕立て上げる資格ファイター、とか、ある日突然ボランティアを名乗る女性が家庭に入り込んだりだとか。だいたい、一見普通の人が登場人物。取り巻く環境もごく普通の家庭だったり。そこに何だか突飛な状況が入り込んで、いつのまにかあり得ない展開。でもちょっと皮肉で、風刺が効いてて、にやりとさせられたり、人間てコワイと思わされたり。「居間の盗聴器」が、読後感よし。
すごく上手か、と言われると微妙だ。でも、結構面白い。絶版だらけで埋もれそうだったこの作家をもり立てたのが一般書店の店員さんらしいのはいい話だと思う。「床下仙人」も読んでみたい。

天下り酒場 (祥伝社文庫)