幸福な無名時代/ガルシア・マルケス

ガルシア・マルケスが小説家になる前、コロンビアを出て、ベネズエラでのジャーナリスト・編集者時代に書いた記事を集めた一冊。面白かった。
ルポルタージュなのだけれど、何やらとても小説的で。ベネズエラでの軍事独裁政権の崩壊であったり、狂犬病にかかった子供を救うためのワクチンの輸送だったり、連続行方不明事件…おそらく口封じのための…であったり、テーマはさまざまですが(政治モノが多いですが)、生々しく、それでいて絵空事風だったり。彼の小説の原形としての文章がここにありました。
カラカスの干ばつの話だけは、創造なのかな?風刺が効いていて、そしてドラマチックで、一番気に入りました。ちょっとコワイ話でもあるけれど、それが狙いか。解説などでも「あえて」事件・事象の解説はされておらず、マルケスの文章を味わうためだけの一冊、とされています。

幸福な無名時代 (ちくま文庫)

幸福な無名時代 (ちくま文庫)