海の仙人/絲山秋子

絲山秋子さん二冊目。でもオフィシャルサイトの日記を知ってから、ちょくちょく見ていたので、勝手に何となく親近感。
「海の仙人」は短編よりの中編、くらいの薄さではあるのだけど(字も大きめの印刷だ)、読後感はなんだか大長編を読み終えたかのような感慨。なんでしょう。これ。
敦賀が気に入って住み始める河野という男と、元同期で口が悪くて、河野のことが好きな片桐という女性と、河野とつきあうことになる中村かりん、あと、ファンタジー。すべて、そう、控えめな描写や展開なのだけど、気づくと突拍子もないところに辿り着いている気持ちになる。短編に盛り込み過ぎな筈なのだけど、納まってるのもすごいな。
前回読んだ「沖で待つ」でも感じたことだけど、小説の中に、絲山秋子という女性の実体験や知識がそのまま使われてるところが、ちょっと浮くといえば浮くのだよな。「沖で待つ」では、INAXに勤めてたという経験がそのまま反映されてるんだろう仕事の描写。今回だと、web日記で知ったけど、クルマ好きなところ。それぞれ、そこにリアリティがあるのが良いのかもしれなくて、両方とも先に余計な作家の情報が入っちゃってるワタシの読み方が正しくないのだとは思うのだけど。
いやでも。結論として、好きな小説です。

海の仙人 (新潮文庫)

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