集合住宅の時間/大月敏雄

集合住宅の時間
お世話になっております大月先生の著作。古いものが多いですが、戦前戦後問わず、現在お住まいの自分のマンションまで含め24の「集合住宅」を取り上げて語る一冊。雑誌『住宅建築』の連載をまとめたものです。同潤会アパートはもちろん、ワタシがやっている共同建築である九段下ビルや、戦後の住宅供給公社や公団のアパートだったり、大阪のトヨクニハウスなどなど。大月さんの文章には、対象とする建物への愛が感じられる気がしますよ。植田実さんの「集合住宅物語」も似た構成ですが、建築計画の専門家である大月さんはより学術的にその建物を論じてくれている部分が心地よいので、合わせてオススメだと思います。
まえがきに、先生が以前からおっしゃられていた「時間経過=ものの価値の低減」っていうだけの評価はおかしくないか?というところがわかりやすく書かれていました。我が国の建築は、こういうふうに評価されているんですよ、という話を人間になぞらえているのですが。

あなたの価値は年を経ていくごとに減っていき、六〇歳になると、価値がゼロになります。健康であろうがなかろうが、ボケていようがいまいが、多くの知識と経験がぎっしり詰まっていようがいまいが、多くの人々に愛されていようがいまいが、年々価値が減っていき、きれいにゼロになります。もし六〇歳を超えてしまうと、あなたの価値はむしろマイナスになります。だって葬儀費や納骨費がかかるのですから。