クレヨン王国の十二か月/福永令三

クレヨン王国の十二か月 (講談社文庫)
童話「クレヨン王国」シリーズの第一作目の、オリジナルバージョンだそうです。出版されるときに削った部分(およそ100ページ!)を戻し、時勢に合わないところなどを少し修正した完全版「クレヨン王国の十二か月」。作者のまえがきとあとがきもとても優しくていいです。小学生の頃、友達に借りて読んだだけで手元にはなかったので、それこそ一度しか読んだことなかったはずだけれど、読んでるうちに「ああ、そうだ!知ってる!」といろいろ甦ってきました。いい感じに。
物語は小学生二年生のユカとクレヨン王国のシルバー女王が、家出したゴールド王を探す12ヶ月の冒険譚。ゴールド王は、シルバー女王に嫌気がさして、12の欠点を改めなければわたしは戻らない!と旅に出てしまう。これ、小学生の頃にこの設定に疑問を抱いた記憶は全くないのだけど、考えてみると結構すごい理由だよなあ。ちなみにシルバー女王の欠点は、王様の書き置きから引用すると以下の通り。

一つ、ちらかしぐせ。二つ、おねぼう。三つ、うそつき。四つ、自慢屋。五つ、ほしがりぐせ。六つ、偏食。七つ、意地っぱり。八つ、ゲラゲラ笑いのすぐ怒り。九つ、けちんぼ。十、人のせいにする。十一、うたがいぐせ。十二、お化粧三時間。

もともとは第五回講談社児童文学新人賞を受賞して世に出たこの小説は、もちろん子供向けなのだけど、オトナでも楽しく優しい気持ちとちょっとの反省を味わえます。