いつか王子駅で/堀江敏幸

いつか王子駅で (新潮文庫)
文庫のカバーがかわいい(帯いらないなあ)。
堀江敏幸2冊目ですが、静かな空気感は変わらず。でも、ちょっと冗長になったかなあ。前はそんなふうに感じなかったのだけど…(読書記録開始以前に「雪沼とその周辺」を読んだ。これは結構好きだった)。路面電車の走る王子とその周辺の町が舞台。特に大きな事件が起こるわけではなく、大学の非常勤とか翻訳とかで稼いでいる「私」はひとりで淡々と暮らしている。生活の描写から、考え事をしているときの文学観(岡本綺堂瀧井孝作島村利正)や競走馬の思い出がさーっと入ってきて、また現実に戻る。冗長なりに、最後にはその世界観に染まってしまって、冗長さが気にならなくなる感じではありました。大家さんの娘、陸上部の中学生咲ちゃんが走る描写がすっきり気持ちよかった。