夢みるピーターの七つの冒険/イアン・マーキュアン 訳 真野泰

夢みるピーターの七つの冒険 (中公文庫)
空想好きな少年ピーターの身に起こった(?)ことを綴る七つの短編。どこまで空想でどこまで現実なんだか…。第一章の前に「ピーターはこんな子供」というのが説明される。本人はいたって普通のつもり…でいたのだけれど、オトナたちの反応を幾つか学習して、そして自分も少しオトナになったりなんかする過程で、あ、ちょっと違うのかな?という「自分」に思い当たる。それを自覚した上で、自分の中に広く深くある空想世界の冒険を、記録しておこうという試みを本にした、という形をとっている(まわりくどいな)。
飼い猫との魂の入れ替え。いじめっこの「本当」を見抜いた瞬間。おとなの恋愛に対して思うこと。赤ちゃんが見ている世界etc. 七つのエピソードは、なかなかにスゴイ。ありがちな「オトナのための童話」…「子供のときってこうだったよね」というよりは、もう少し「本当の子供」を描き出してみせてくれる感じ。ワタシはこれを読んで、子供のとき描いてた、そしてすっかりそれを忘れてた、子供なりの死生観を思い出した。解説は角田光代