重力ピエロ/伊坂幸太郎
伊坂幸太郎2冊目。面白かった。話しを紡ぐ力のある作家さんだと思う。もっと読みたいと思う。…でもその一方で、ところどころ気になるとこも。
重力ピエロ、は物語の主役となる僕と弟の春の兄弟が、幼い頃両親と出かけたサーカスで見たピエロの空中ブランコに関するエピソードから想起される言葉。要所要所で、思い出したように繰り返される。
遺伝子情報を扱う会社に勤める兄と、街の落書きを消すアルバイトをしている弟の間には出生に関しての事情がある。舞台である仙台の街では、放火事件が続いている。父親は、癌で入院している。放火事件に注目し、その解明をしようとする兄弟と父親と。重い「事情」を乗り越えてきた家族のエピソードひとつひとつが結構いい話で、話しの展開は納得できる。暗い話を暗く書いてないのも好きだ。
ああでもな。なんだか惜しいのだよな。冒頭と結文で同じ一文を使うテクニック(なのか?)も然り、伏線の張り方があまりに見え見えなのも然り、脇役たちがどうしても浮き気味なのも然り、小説として面白いのだから、もう少し、ひねって欲しいと思ってしまう。期待が大きすぎるのか。