嵐が丘/エミリー・ブロンテ 訳 鴻巣友季子

嵐が丘 (新潮文庫)
水村美苗の「本格小説」を読んで↓これは再読したいな、と思った「嵐が丘」。
http://d.hatena.ne.jp/ka_ya/20060115/p1
近年になって新訳がふたつ出ているのですが、岩波の方は上下巻。つい一冊ものの新潮文庫で入手。鴻巣さんという訳者の方を、友人が知っていたのもあって。
19世紀。ヨークシャーの荒れ地。嵐が丘とついた地名から想像されるのは、灰色の空と野原と強い風だった。この訳では対するもう一軒を「鶫の辻(つぐみのつじ)」と訳している。記憶が定かでないけれど、たぶんこれはこの人ならではの訳だよな?嵐が丘で育つ二人兄妹と拾われっ子。妹キャサリンと拾われっ子ヒースクリフの二人でひとつのような混じり合いにぶつかり合い。鶫の辻のエドガーと結婚したキャサリンをめぐって果てしなく続く…復讐劇。
はー。くたびれました。何十年にも及ぶ復讐の発端は愛だったのだろうか。古い時代だから。田舎だから。狭い世界だから。そんな理由を超越して荒削りで無謀でわがままな人間関係がどこまでも続きますよ。語り手は晩年のヒースクリフに鶫の辻を借りることになるロックウッド氏。そして家政婦ネリー。この形式含め「本格小説」が影響されているのがよくわかります。ただこっちは、もっと陰湿だなあ。軽井沢のじめじめ感なんかメじゃないヨークシャーの荒れ野原と人物像ですわ。
初回はたぶん高校生の時に読んだと思うのだけれど、今回再読して、とにかくヒースクリフが激しいヤツで…怖くて惨くてびっくりするくらい濃い人物に描かれているように感じた。こんなだったっけ?と。新訳、侮れません。なんというか、勢いがありました。好みは分かれる気がするけれど、こんな「嵐が丘」もすごい。