星の王子さま/サンテグジュペリ 新訳・池澤夏樹

星の王子さま (集英社文庫)
うちには岩波少年文庫内藤濯さん訳の「星の王子さま」がある。1985年の第54刷。繰り返し読んだからかなりぼろぼろ。そんな本、あえて新訳を読みたかったのは、やはり池澤夏樹という作家がとても気に入っているから。
結論としては、とてもいいですよ。幾度も読んだ内藤さんの訳で受け取ってきた印象というか気持ちは、まったく損なわれない。そんなに変えようもない原作の魅力なのでしょうか。一番わかりやすい?変更は象を飲み込んだ「ウワバミ」が「ボア」と訳されていることですかね。ボア?それが原語での言葉のなのかしらん。ウワバミ、てのは蛇のことみたいで、日本語で近いものを当てたのだったかな。
あと若干空気が違うのは、池澤訳の方が大人向けな感じということか。敬体の内藤訳に対して常体の池澤訳。内藤訳では王子さまへの呼びかけは「ぼっちゃん」だったと思うんだ。池澤訳では「王子さま」と呼びかける。…と書くと、けっこう変わりそうなものだけれど、不思議と受ける印象はほとんどぶれないのだよな。変えようのない挿絵があのままだからというものあるのかも。
そして池澤夏樹はあえて変えなかったのかもしれない。でもそれでとてもよかった、と思います。もし大人になって初めて「星の王子さま」を読むという人になら、池澤訳を薦めたいかも。