続 明暗/水村美苗

ISBN:4101338116
夏目漱石の絶筆「明暗」のつづきを書いて完結させてしまった作品。なんせ漱石である。作者本人も批判はもとより覚悟の上で、自らが愛し、読みたかった「明暗」を仕上げている。
これを手に取ったのは、本格小説私小説と読んだ水村美苗に興味を持ったから。+おととし永井愛演出の舞台「新明暗」で佐々木蔵之介が津田を演じるのを観たから。
漱石が書き終えた188章から引き継いで物語は進む。温泉街で保養中の津田。津田を捨て結婚した清子も同じ宿にいる。水村美苗の書く津田は、漱石の描く津田とそんなにぶれていないと思う。舞台で観た津田にも近い。というわけでどうしても佐々木蔵之介氏の津田を連想しつつ読み進む。小林もそんな感じ。逆に津田夫人である延子や、吉川夫人、お秀、清子…の女性陣は、その「女性性」みたいなものが良くも悪くも際立って描かれているような。濃い。濃いんだ。これが。女ってコワイ。男ってしょうもない。
追いつめられるお延。どうしてもどうしても悪気のない駄目男な津田。漱石ではなく、水村美苗の小説として、盛り上げ方・持って行き方は面白かった。永井愛の舞台とはまた違った解釈です。
元の「明暗」はこちらで読めます。お暇な時にどうぞ。これで結末が気になったら、水村美苗を読んでみるといいかも。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/782_14969.html