都市の鍼治療 元クリチバ市長の都市再生術/ジャイメ・レルネル 訳 中村ひとし・服部圭郎

都市の鍼治療―元クリチバ市長の都市再生術
以前、ブラジルの都市クリチバの都市計画本を絶賛したのですが、
http://d.hatena.ne.jp/ka_ya/20051124/p1
その立役者の元市長が書いた一冊。原題 Acupuntura urbana。
39章に分かれた短い文で、つれづれに都市に関するテーマを取り上げて行く。市場であったり、照明であったり、交通網に関する提案だったり。いろいろ。バルセロナやパリ、東京などの訪れたことのあるであろう都市の特徴を取り上げつつ、一貫しているのは「都市」というか「まち」そして「都市計画」「まちづくり」のようなものを、もっと身近なものとして捉えなさい、という姿勢か。奇跡のまちと呼ばれるクリチバの概要を知るには、前出の「人間都市クリチバ」がいいですが、その奇跡を起こした市長の考え方を知ることができる一冊。
個人的には、ブラジルにまつわる「音楽」が出てくるのに興味津々。

カイミやジョアン・ジルベルト、ジル・ジルベルト、カエタノといった歌手を抜きにして、バイーアを語ることは難しい。また、ミルトン・ナシメントの歌をなくしてミナス・ジェライスを語り、感じることは難しい。さらに、ブラジルという国をヴィラ・ロボス、アリ・バロッソの歌なしで把握するのは難しい。…(中略)…歌は人の心にそのイメージを浮かび上がらせるのである。そのメロディーが街をより良く感じるようにしたのが、かのアントニオ・カルロス・ジョビンである。

だとか。(ミュージシャンの名前表記は本のまま)
実用書というよりは、全体を通して詩的な部分もあります(実際最後には詩のようなものも載ってるのだけど)。その分、訳がかなり「直訳」な感じなのが興をそぐかな。服部氏というのは都市計画の学者で、中村氏というのはブラジルに移住して、レルネル市長時代に抜擢されたクリチバ市の職員(今は市長補佐官)。