トーベ・ヤンソン短篇集/トーベ・ヤンソン 訳 冨原眞弓

トーベ・ヤンソン短篇集
ムーミンの作者として世界的に著名なヤンソンの短編集。さまざま、色とりどりのものが集めてあるので一概に感想を述べづらいけれど、最初の「夏について」の一連と、「旅」あたりからの後半は素晴らしく良かった。途中「創作」の一連の中途半端に硬質な感じは好みではない。
ヤンソンは画家でありイラストレーターであり文筆家だった。何が本業というのでもなく、全てが彼女にとっては主だったようだ。父親が彫刻家、猿を飼っていた、母は画家、夏には島に渡って暮らした…などの彼女の生い立ちが、ムーミンの世界に影響を与えているし、この短編集の中でも「カリン、わが友」「猿」「リス」などは実体験に基づいている部分が多かろうということは、解説を読むとわかる。
あとわかるのは、ヤンソンの世界は静かで、なんというか、音がよく聞こえて、子供目線も大人目線も使い分けることが出来て、ちょっと皮肉がきいているということです。「往復書簡」なんて何かと思った。

わたしに娘が生まれたら、口笛のふきかたを教えようと思う。たとえば森のなかで迷ったとき、口笛で合図しあえればつごうがいい。もし彼女がこたえなければ、いまはひとりでいたいのだなとわかる。

少女の目線で書かれた「夏について」。
ワタシの母も、娘に口笛を教えることを忘れずにいてくれたらよかったのにと思うよ!(風の音しか出せません)(きっと森で迷いっぱなし)(歌うか?)。