貧乏サヴァラン/森茉莉

貧乏サヴァラン (ちくま文庫)
「サヴァラン」はフランスの美食家の名前ブリア=サヴァランから。グルメ…いえ、くいしんぼうであり、家事はひたすらに不得手だけど料理だけはする森茉莉の、食に関するエッセイを集めたもの。
フランスでの贅沢生活の話、森家での話、結婚時代の山田家での食卓の話、そしてこのエッセイ執筆時の、往年の食生活や嗜好について。店の名前、お酒の名前、食材、調理法、鮮やかな記憶は、やはり繰り返し思い返す「好きなこと」だったのだろう。なんだかよくわからないけれど、プチ・スイスというチーズ?は食べてみたくなるし、味噌汁の仕上げに水溶き辛子をちょっと加える、なんて明日にでも試してみたい。相変わらずの我が儘お嬢さんぶりも健在ですが、食べ物に関する集中力はちょっと素敵で面白い。

森鴎外の本名は林太郎。その子供は於菟 [おと] (Otto)、茉莉 [まり] (Marie)、不律 [ふりつ] (Fritz)、杏奴 [あんぬ] (Anne)類 [るい] (Louis)。そうして茉莉の子供が爵 [じゃっく] (Jack)と亨 [とおる]。というのを最近ネットで見て、へぇーっと思っていたのですが、この本にはいい大人になった爵 (Jack)くんが出てきます。