十二人の手紙/井上ひさし
ISBN:4122007216
短編集。書簡形式。趣向を凝らした手紙の文面で物語りが綴られる。「同封した戯曲」を読ませたり、もしくは「出生届」「死亡届」「家出人捜索願」だったりで話を進めたり、出されなかった手紙だったり、もういろいろです。人の哀れさ、みたいなのもあるのだけれど、だいたい皮肉がきいたものが多くてにやりとさせられました。もちろん大どんでん返しもあったり、そんなネタか!だったり。面白い。最後の話で、無関係だったそれぞれの編の登場人物たちを一堂に会させてみたり、なんていうおまけもついていて、そのうまさにやられます。井上ひさし、やっぱりすごいなあ。
読んだのは久しぶりでしたが、井上ひさしとの出会いはインパクトが強かった。中3の2学期の期末テストなんていう受験生的にはとんでもない時期に虫垂炎で入院したワタシに、親が買ってきてくれたのが井上ひさしの「国語元年」だったのですよ。本の虫だったワタシに、せめて勉学出来そうな本、と選んだのでしょうか。理由は結局聞かなかったのだけれど、それまで知らなかった世界で、読みふけってしまったのを思い出します。