雪は天からの手紙/中谷宇吉郎

雪は天からの手紙―中谷宇吉郎エッセイ集 (岩波少年文庫)
雪の結晶の研究で著名な物理学者中谷宇吉郎さんのエッセイをあつめた「岩波少年文庫」。すっごく面白かった。雪の結晶の実験に関する話は読んだことあったかな、と思いましたが、とにかくそれ以外も文才があって、真摯に物理学に取り組んでらして、視線が暖かい。おこがましいですが、いい学者さんなのがよくわかりますよ。難しいこと、偉いことを簡易に書けるのはもうそれだけでもすごい。
感銘を受けた話は幾つもあるのですが、恩師寺田寅彦のことを書いた「球皮事件」、群衆が惑わされる危険に関する「千里眼その他」、「立春の卵」が科学よみもの?としてもエッセイとしても秀逸。いろいろ書き留めたい言葉も多かったけれど、高校生の書いた素晴らしい論文を読んで、中谷氏が挙げた(優れた物理学の)研究を成し遂げる心得を、自分のためにここへ。

 第一にそして一番重要なことは純粋に興味を持つということである。第二には(中略)熱心さを持つことである。第三には思いついたことを、おっくうがらずにすぐ試みてみる頭の勤勉さを持つことである。第四には偶然に遭遇した現象をよくとらえ、それを見逃さぬ事、すなわちいつも目を開いて実験をすることである。第五には新しい領域の仕事を始める時に怖がらぬことである。(中略)多くの知識と打算とが一番じゃまになる。第六には妙にこだわらぬこと、これは何でもないようで、そのじつなかなか難しいことである。そして以上述べたそれらのいろいろの心得のほかに、研究の全体に通じてある直観的な推理を働かすことである。