愛の年代記/塩野七生

愛の年代記 (新潮文庫)
塩野七生は恋愛モノ短編集。イタリア中世末期からルネサンスくらいまでの時代、愛に生きた女性達の物語でございます。繁栄するヴェネチアの描写がステキで、ゴンドラ滑る水の都に惹かれました。筆力で絵画的な街の風景まで描けてしまうのはすごいね。一応建築史屋さんとしてはよく聞く広場の名などに具体的な画も浮かびつつ。
賢く美しいピアンカリエリ伯爵夫人とトルコの海賊ウルグ・アリの一度だけの逢瀬から紡がれる恋愛物語がよかったです。うつくしい。他の誰も知らない、理解されないけれど、ふたりの間でだけは了解がある、というのがうまく描かれていて。…あれ、今気付いたけれどこの短編集、ハッピーエンド的なのはないのかな。