植田実の編集現場 建築を伝えるということ/花田佳明

植田実の編集現場―建築を伝えるということ
植田さんとの出会いは同潤会アパート抜きでは語れない。これを卒論のテーマにしよう、と読んだ「同潤会アパート原景」(マルク・ブルディエ)は植田さんが創刊した「住まい学体系」の一冊であり、その後を網羅した特集の載る「都市住宅」は植田さんが編集長の雑誌だった。本書でも、植田さんとの固有の出会いを読者ひとりひとりが持っている…とするくだりがあるが、そう、その名を意識してるかどうかは別として、建築を学ぶ人がどこかで出会う人ではないかな。
ワタシも、知れば知るほど「同潤会関係」だけでは全然語りえない建築編集者植田実氏さんを知り、その名をココロに刻み込むようになった。植田さん本人は、小柄なおじいちゃん、という印象だ。すこしくたびれて身体に馴染んだチェックのシャツにポケット付きのベストだとか。帽子も被って。結局は同潤会アパート関連の講演会などでお世話になったりした。その足跡を知り、言葉を聞き、どんどんファンになっている。とてもニュートラルなのに、立ち位置がはっきりしているし、そう評価されているひとだと思う。
本は花田佳明氏による「植田実」の編集者としての足跡や編集論を軸とし、数本の植田氏による論考の再録と、昨年の展覧会「『都市住宅・再読』植田実の編集現場」のアーカイブで構成される。しばらく「積読」しちゃってたのですが、いやはや、もっと早く読めばよかった。面白かったです。いちおう建築専門書。かなあ。