バビロンに行きて歌え/池澤夏樹

ISBN:4101318115
池澤夏樹週間、いや月間は続く。だって面白いのだもの。好みなんだものー。
今度は小説。内戦続くベイルートで派閥闘争に巻き込まれ、国外脱出を図ったひとりの少年が、まったくの異国日本で傷つきながらも生きていく。という。密入国者であるという事実に怯える日々の中で彼が出会い、影響を与え、与えられた多くの日本人の視点でものがたりはリレーのように繋がれていきます。彼を保護した獣医師のおじいさんが紡ぐものがたりであったり、彼に恋した女性の視点であったり。そうして彼は全くの異国日本で、戸惑いながらも「歌うこと」を知るわけです。
ロックバンド、なんていうものが出てくると途端に陳腐に成り下がる小説というのは確かにあると思う。ここでは、15年前の小説故の「今っぽさがない」感じはするけれど、その要素が何かを下げてはいないと思う。よかった。でもこういうのが得意という気もしないなあ。村上龍だとか石原慎太郎あたりが若者文化を描くノリともちょっと違うのだけども。なんだろうな。こういうの。