南の島のティオ/池澤夏樹

南の島のティオ (文春文庫)
池澤夏樹による児童文学、らしいけれど、大丈夫、大人向けでもある。南の島(ポリネシアのある島がモデルらしい)で暮らす少年ティオが主人公の10の物語。島の婆の予言めいた言葉や、神様の怒りだとか、大人には頼らない違う島の少年エミリオだとか、ああ、きっとこの地では本当なんだ、と思える数々のエピソード。もらうと絶対その絵(写真)の地に行きたくなるという魔法の絵葉書はちょっとファンタジーだけど、それも良しと思える。
魚を食べるのでも、誰かが釣った魚を誰かが運んで誰かが買って誰かが売って、ワタシのうちへとやってきて、ようやく口に入る…のではなくて、釣って、さばいて、食べる。果物をもいでかじる。自分の手で直接自分が食べるものを手に入れる、というのは当たり前のことのはずではあるんだよ。と「夏の朝の成層圏」と「カヒナマヒラの家」を読んで、これ、だったので、池澤氏が繰返し書いていたそういうことと、南の島への思いが美しく実っているのがよくわかって、気持ちよく読めました。まだ未読ですが、この方は沖縄に住んでいたりもするようで(今も?)、沖縄の話も読みたいですよ。

追記:池澤夏樹氏のサイトがありました。
http://www.impala.jp/