夏の朝の成層圏/池澤夏樹

ISBN:4122017122
読み終わりましたー。こんな本も書くのですね。小説処女作だそうで。すごいな。話は単純と言えば単純です。マグロ漁船から夜中に振り落とされた主人公が、なんとか太平洋の無人島にたどり着き、そこで生活を始める。無人島だと思っていたのだけれど、じつは、と隣人が現れてまた変化が訪れ。「彼」と他人称で書かれる「自伝」の形式をとっています。詳しく書くとネタばれしちゃうのでよしときます。これは予備知識なく読み進めた方が絶対に面白い。
もっとぐだぐだになる恐れもあるストーリーが、池澤氏の文章で気持ちよく進んで。よい意味で、距離をおいて描かれていて。リアリティがちょうどよい密度。冗長さがない。(ワタシが読んだ限りにおいて。ワタシにとって)。あっさり描かれていて、出てくる人物は皆クール過ぎるけれど、現実感が失われてないのだよなあ。面白かった。一気に読んでしまいました。ひとつだけ引っ掛かったのは、タイトルかなあ。なんか違うタイトルがいい気がするな。ものすごく個人的な好みの問題かもしれないけれど、ちょっとセンチメンタル過剰な感じがして惜しい。
で、手持ちの池澤夏樹を読み終えたので、また本屋放浪か。と。